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第4話 事件
「松田さん、ニュース観ました?」
「観ましたよ。ちょっとショックですね」
俺が山田さんに返答してから数日後にあった不穏なニュースのことである。
奈良の男女中学生が除染作業員によって大阪で殺害されたというのだ。作業員が帰省中での犯行だったらしい。この事件によって除染作業員の評価は一気に下がってしまった。
これから除染作業員になろうとしている俺達にとっては、最悪なタイミングと言える。
「松田さんはどうします?」
山田さんはこの事件で、俺がどうするのかを心配しているのだろう。
俺だって迷いがない訳ではない。わざわざ批判されそうな仕事をしなくても……放射線を浴びて癌になるかも……しかし心配ばかりしていても何も始まらない。
「ここまできたら、もう行くしかないでしょう」
俺にはもう、選択肢は残されていなかったのだ。
「そうだよな。除染作業員といっても何万人もいるのだから、その中のたった一人のことだもの」
俺に同意するように頷いてはいるが、山田さんも俺と同様に不安だったのかも知れない。
この事件の後俺達は、様々な不安を抱えながらも予定通り行動することを確認しあった。
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