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第6話 炉上生活者 その1
「俺達は炉上生活者だな」
ある日山田さんが、突然そんなことを言い出した。
「……」
山田さんが何を言いたいのか分からないままに、俺は沈黙をする。
「そりゃそうだろう。俺達はコークス炉の上で仕事をすることで生計をたているのだからな」
なるほど、そういう考え方もあるのか。まあ、駄洒落と言ってしまえばそれまでだけど、言い得て妙だと感じた。
俺達炉上生活者は、総勢で二十人いる。それ以外に現場責任者の永田さんがいるが、この人は炉上には出ない。
コークス炉は南側と北側に別れていてそれぞれに班があり、更に朝昼の部と昼夜の部に別れるので全部で四班で構成されていた。
一班当たり五人だが仕事自体は無休なので、四人が仕事をして一人が休むというローテーションを繰り返している。
俺は朝昼の部に所属していた。朝六時から午後二時まで。休みが班内で調整できない場合は、時間帯の違う昼夜の部から応援をもらうのである。その場合その人は、朝六時から夜十時までの連続勤務になる。
たまたま山田さんと谷田君の二人が休んだ日に、昼夜の部からリンクが応援にきた。班長の大田君と怪人尾田君とリンクと俺という構成である。
班長の大田君はまだ二十代半ばながら、しっかりとした好青年だ。男前でもある。結婚はしていないものの彼女がいて、同棲をしているらしい。今時の若者と言える。
このような工場での現場では、若い班長の下に年配の作業員という構図は当たり前になっていた。
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