時間

8/8
405人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
「しおり…上手くいってるかな?」 片付けを二人でする最中、しおは呟く。 「友一様は遺産関係なく、しおり様をお好きなのでしょうか?」 「うん、それはね。友一さんにしおり、遺産放棄するって話したの。」 皿を落としそうになり聞き返す。 「え?」 「えっ?嘘だよ?当主だよ?私が困る。」 くすくす笑いしおが答える。 「それで、その嘘で、何が変わるのですか?」 「しおりは無一文でこの家を追い出される。それでもしおりの面倒を見られる?って聞いた。怪我もある。これからも病院に通う。覚悟はあるのって。」 「辛い現実ですね。」 「うん、でも事実だよ、半分は…。だから、その覚悟がないならもう来ないでって話したの。そしたらね…無一文で追い出されるなら、僕が側にいないと駄目でしょう…て……きゃ~~、素敵。素敵だわ!ヘタレなのに……。」 「濡れた手で顔を触らない…。」 両手を頬に当てたしおを見て、呆れてそれを拭き取る。 「それからの友一さんが、もう……しおりにベタ甘でね?いいなぁって感じ。 しおりも幸せそうだし、いいなぁ……。よし、終わり。もう少しいてもいい?」 「勿論、ベタ甘な事を言えばいいの?」 きょとんとして、しおは笑う。 「ふふっ、似合わない。そのままでいいわ。私には贅沢な相手だもの。多少意地悪でも性格悪くても構わないわ。」 「随分な言われ様……。」 誠はアイスティーを作り、しおに出す。 「これ好き…。」 「はい、お好きですね。しおの好きな物は把握しています。」 「誠さんはお父さんには会わないの?」 「ええ。渡瀬の父が父親です。例えかっこうでも、親を最後まで大事にしたら、少しは他の卵にも顔向けが出来るでしょう?」 「それ…。思ったんだけどね?かっこうの親も気付いたのもいるかもしれないわよね?気付いても、もう…可愛いから育ててしまう。まして信一さんご夫婦は知っていて引き取った。愛情を疑った事はないでしょ?それでいいじゃない?」 「しおは落とされて帰れずにいたのに…のうのうとここで暮らしていたんだよ?」 「関係ないわ。落としたのはあなたじゃない。誠さんは夢中で預かった子を見てただけ。可愛いがっただけでしょ?私を好きなのはそんな気持ちから?」 「違うよ?」 「でしょ?かっこうはここにはいないわ。もう、何処にもね。」 しおは優しく笑った。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!