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「しおり…上手くいってるかな?」
片付けを二人でする最中、しおは呟く。
「友一様は遺産関係なく、しおり様をお好きなのでしょうか?」
「うん、それはね。友一さんにしおり、遺産放棄するって話したの。」
皿を落としそうになり聞き返す。
「え?」
「えっ?嘘だよ?当主だよ?私が困る。」
くすくす笑いしおが答える。
「それで、その嘘で、何が変わるのですか?」
「しおりは無一文でこの家を追い出される。それでもしおりの面倒を見られる?って聞いた。怪我もある。これからも病院に通う。覚悟はあるのって。」
「辛い現実ですね。」
「うん、でも事実だよ、半分は…。だから、その覚悟がないならもう来ないでって話したの。そしたらね…無一文で追い出されるなら、僕が側にいないと駄目でしょう…て……きゃ~~、素敵。素敵だわ!ヘタレなのに……。」
「濡れた手で顔を触らない…。」
両手を頬に当てたしおを見て、呆れてそれを拭き取る。
「それからの友一さんが、もう……しおりにベタ甘でね?いいなぁって感じ。
しおりも幸せそうだし、いいなぁ……。よし、終わり。もう少しいてもいい?」
「勿論、ベタ甘な事を言えばいいの?」
きょとんとして、しおは笑う。
「ふふっ、似合わない。そのままでいいわ。私には贅沢な相手だもの。多少意地悪でも性格悪くても構わないわ。」
「随分な言われ様……。」
誠はアイスティーを作り、しおに出す。
「これ好き…。」
「はい、お好きですね。しおの好きな物は把握しています。」
「誠さんはお父さんには会わないの?」
「ええ。渡瀬の父が父親です。例えかっこうでも、親を最後まで大事にしたら、少しは他の卵にも顔向けが出来るでしょう?」
「それ…。思ったんだけどね?かっこうの親も気付いたのもいるかもしれないわよね?気付いても、もう…可愛いから育ててしまう。まして信一さんご夫婦は知っていて引き取った。愛情を疑った事はないでしょ?それでいいじゃない?」
「しおは落とされて帰れずにいたのに…のうのうとここで暮らしていたんだよ?」
「関係ないわ。落としたのはあなたじゃない。誠さんは夢中で預かった子を見てただけ。可愛いがっただけでしょ?私を好きなのはそんな気持ちから?」
「違うよ?」
「でしょ?かっこうはここにはいないわ。もう、何処にもね。」
しおは優しく笑った。
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