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「外国に行かれた孝志様は見事に取引を成功させました。が、空港に向かう途中、テロではないそうですが、物騒な小競り合いに巻き込まれて、お亡くなりになりました。
それを聞いたさゆり様はショックで、そのまま出産されました。
産まれた子は女の子で、旦那様もショックが大きかったのでしょう……男の子でなければ認められないと、さゆり様を追い出されたそうです。
そこから先は、私の調べた事ですが、あなたを抱えて働くところもなく、帰る家もなく、孝志様に先立たれた喪失感から、自殺を考えた様です。
あなたを連れて行くわけにはいかないと、思われたのでしょう。
それで…施設の前に…。」
「母は…自殺を?」
「はい。当時、私の父はここで管理人として働いておりました。父が遺体の確認に行ったそうです。旦那様に内緒で、孝志様と一緒に納骨したと聞いております。」
なんて返したらいいか、沈黙が続いた。
「旦那様を酷いとお思いでしょうが、それから旦那様も後悔されて、寂しくお暮らしです。残り僅かな時間を孫と過ごしたい、そう考えても不思議ではございません。
謝りたいと、言っておいでです。
お話した通り、心臓が弱いもので、ショックを受ける様な事は言わないで頂きたい。
その為にお話をしました。明日、落ち着きましたら、旦那様の具合を見て、お逢い頂きます。」
「父は、仕方ないかも、ですけど…母は…明らかにお祖父さんの責任ですよね?
夫がいなくなって、出産したばかりの人を追い出すなんて…。
私は、母に捨てられたのではなく、お祖父さんに捨てられたのと同じ事ですよね?
そんな人に、逢いたくはありません。私を捨てたんです。
捨てた孫に今更、用はないでしょう?」
立ち上がり出て行こうと、ドアの前まで歩いた。
背中から声がした。
「出ていけば…しおさんの治療費は払えません。お孫さんだから、払うのです。出て行く方のお友達など、関係ありません。」
「そんな……それじゃあ、しお…はまるで、人質じゃないですか!」
「今日は身体を休めて下さい。冷静になって良く考えて下さい。先の短い老人に酷いことを言わない様に、責めたりしない様に…。
優しい孫になって下されば、しおさんには最高の治療をお約束します。」
渡瀬の笑顔に、腹が立った。
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