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17時になると部屋をノックされた。
まだ若い女の子が入って来た。
「失礼します。渡瀬さんからお嬢様の身の回りのお世話を言いつかりました。
よろしくお願い致します。」
深々とお辞儀されて、自分も釣られてお辞儀した。
「お嬢様は……その様な事、なさらなくても…。」
くすりと笑い彼女が言うので、私も笑って答えた。
「慣れないんです。お嬢様とか、身の回りとか……。座っても?」
事故から2週間経っていなくて傷はまだ痛んだ。
「勿論です。手をお貸し致します。」
部屋の小さなテーブルの置いてある椅子に座った。
「お食事は、お怪我も辛いでしょうからこちらに運ぶ様に言われておりますが、それで宜しいですか?」
「宜しい……て言われても、よく分からないの。」
困った様に私が言うと、彼女はまたくすりと笑う。
「なんか…変かな?」
困った顔で私が聞くと、怒ったと思ったのかひどく慌てて謝った。
「申し訳ございません。笑った訳ではなく…決して…。」
「ああ~、違うの、怒った訳じゃなくて…。」
二人で慌てて顔を見合わせて笑った。
「はぁ~ごめんね?急に連れて来られて、正直、分からないままなの。私、しおり………、ううん、二人の時はしおでいいわ。そう呼んで?あなたは?」
「実知(みち)と申します。お嬢様を呼び捨てには。」
「お幾つですか?」
「20です。最近、こちらに来ましたのでまだ新人です。至らぬ点は有ると思いますが、暖かく見て頂ければ努力致します。」
「二人の時は敬語もいいです。実知さんの方が私より歳上です。私は18です。
高校も行ってません。この家の事、色々話してくれると助かります。
取り敢えず、夕食ってここじゃなければどこで食べるの?」
実知はくすりと笑うと、小さな声で失礼しましたと言ってから、
「こちらに、私も宜しいですか?」
と、反対側の椅子を引いた。
「ええ、勿論です。座って聞かせて下さい。」
しおりはそう答えて、久し振りの同じ目線にホッとしていた。
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