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「就職するのか?会社に?」
お茶を飲んで驚いて誠は聞く。
「反対?誠さんに反対されちゃうと、ここから先の話が言いずらいな……。」
ボソッと呟いてから、最後の一口をしおは口に運ぶ。
「うん…何?この際、聞きますよ?別に働く事に反対ではない。ただ、佐伯の名前を嫌がっていたのに、佐伯の会社に入るというのが意外だった。」
「しおりは佐伯 しおりとして入社する。私は1番下から学んで行きたい。いつか、それがしおりの役に立つと思えるから。」
「うん、しお様らしい…。でも、佐伯 さおりではすぐに分かるよ?」
しおは冷蔵庫からアイスを出して、誠の前に差し出した。
誠は黙ってそれを食べる。
「だから!入社前にね?違う名前になりたいの。」
笑顔でしおが言う。
「違う名前?日野 しおで行くつもりですか?無理ですよ?戸籍はもう変わっています。」
「ふっふっふ~~。甘いな。渡瀬は甘い!」
「何ですか?このアイス並みに甘いですか?」
「大学のうちに、渡瀬 さおりになるの。それなら誰も気付かない。こういう時二卵性双生児ていいわね?一卵性じゃあ、顔でバレる。」
「………驚いた。」
目の前の美味しそうにアイスを食べるしおを見つめた。
「やっぱり反対?残念だな…お祖父さんはいいよって言ってくれたんだけどな…。」
「知恵熱を出されていたしお様が……逆プロポーズですか?」
ぼうっと呟く。
「逆って…まだ先の話よ?大学は4年あるのだし、20になったらってお祖父さんが…。」
「ああ…そうですね。ちょっと心臓が止まりそうでした。」
「何よ!嫌なの?」
「とんでもない。知恵熱を出されていたしお様から、逆プロポーズなど光栄です。
人間の成長を…これほど手応えを感じた事はございません。」
「さっきから知恵熱、知恵熱て連呼しないでよ!そういうとこよ?私をいつも怒らせるのは…。」
指を差し、怒るしおに平然とアイスを食べながら答える。
「2年後、いや、もう1年かな?その時のプロポーズは私からしますね。しおは、好きなように思う様に生きて下さい。サポートは私がします。何処までも自由に生きていいのです。」
それを聞いてしおは優しく微笑む。
「ありがとう。誠さんも自由になって良いのよ?ここで働き続ける事はないわ。
どんな職業でも構わないから。」
「ここは、意外に気に入ってるよ。」
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