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朝食を終えて、何をしていいか分からないまま、ボッーと窓際に座っていた。
10時頃にドアがノックされて、渡瀬が顔を出した。
「おはようございます。よくお眠りになられたでしょうか?」
「おはようございます。お陰さまで。」
「旦那様の所にご案内致します。優しい孫になる準備はよろしいでしょうか?」
「しお…の為なら、どんなことでも…。」
「結構でございます。では、こちらへ。」
3階にエレベーターで上がる。
「エレベーター……。」
呆然と乗る。
「どうか致しましたか?」
「どうかって…普通の家にエレベーターはないでしょ?」
「そうですか?最近はある家もありますよね?それにこれはお客様とご家族用で私共使用人は使えません。」
「へぇ~。案外ケチなんですね。働いてる人こそ、重い掃除機やら運ぶのに必要でしょうにね…。」
横を向いたまま、答えてエレベーターを降りた。
「掃除機は各階にございます。」
歩きながら返されて、
「ああ、そうですか…。」
と答えた。
ふと横に目を向けると、笑いを堪えている渡瀬が目に入った。
「ちょっと……何よ?」
半身を引いて聞いた。
「いえ、最初と違い全身で私に、「不審」という目を向けておられて。」
「だって、あんなこと言われたらそうでしょ?」
「そうですね。ですが、万が一、お祖父様嫌い!なんて事を言われて、お祖父様にもしもの事があれば、しおり様も取り返しがつきません。しおり様も感情で動くタイプの様ですので…ブレーキをかけさせて頂きました。」
「ブレーキ……。渡瀬さん…お幾つですか?若く見えるけど、こんなお屋敷の管理って…普通は弁護士でもつかない仕事ですよね?」
執事がいるならこういう人なんだろうと思うような、そんな容姿を渡瀬はしていた。
背が高く細身で、サラサラの黒髪だった。
「モデルにでもなれば儲かるのに…。」
考えていたことが口から出た。
「失礼…。」
口を押さえて謝った。
「くく………くくくっ…。」
お腹を押さえて、壁に手をついて笑っていた。
「そんな風に…笑うんですね…。」
唖然として言うと、
「人間ですから…。」
と帰って来た。
「お祖父様にお会いしたら、またキチンと質問にお答えします。」
立ち直り、背筋を伸ばして言うと、渡瀬は奥の扉の前に私を連れて行った。
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