佐伯家

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私は始めから、しおりじゃないと言っていたのだ。 無意識のうちにちゃんと否定していた。 夢の中でそれを思い出した。 眼が覚めると大きなベッドで、豪華な部屋で現実逃避したくなった。 それでも、しおりの代わりにここにいる事でしおりを守れるなら…ここに居ようと思えた。 しおりが目覚めるまで。 「しお様、お気付きですか?」 実知さんが部屋に入って来て、駆け寄った。 ベッドから身体を起こして、返事をした。 「どの位寝てましたか?」 「2時間ほどです。お医者様が傷の痛みだろうと。まだ、無理は良くないと。渡瀬さんも反省されていました。旦那様に会わせる為とはいえ、長い時間、椅子に座らせてと。」 「渡瀬さんは?」 「お医者様をそのまま旦那様のお部屋にお連れになりました。」 (誰が命を狙うの?しおりは本当に安全なの?) 「しお様?」 「大丈夫、平気。少し疲れたみたい。緊張もしてたし。」 「それはそうですよね。実のお祖父様に初めてお会いしたのですから。今、飲み物をご用意します。しお様は……。」 しおはじっーと実知を見つめた。 「この部屋では?」 「しお……は、何が宜しいですか?」 「敬語、取れないね?」 くすくす笑って言うと、 「うっかり廊下で間違えては怒られます。これ以上はお許し下さい。」 と実知は答えた。 それから1週間、部屋で食事を取り、休養と言い、午前中にお祖父さんの部屋を訪ねる以外は部屋から出なかった。 身体を治さないと、しおりの代わりとはいえ、しおりがあっさり殺される訳にはいかない。 その間、何度も事故の事を思い出そうとした。 その度にひどい頭痛に襲われた。 (免許を取った…それは思い出した。どうしてレンタカーを借りてまで車で出掛けたの? あの日は月曜日だった。しおりは学校だったのに休んでる。) 考えれば、容赦なく頭痛は襲って来た。
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