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1時間後、部屋に来た渡瀬に聞く。
「今日、平日でしょ?学校も仕事もあって、しかもあんな急に言われて集まれるの?」
「先程、ご連絡を致しました。多少遅れる方は見えるかもしれませんが、お集まりになります。」
しおは呆れ顔で椅子に座った。
「お金持ちって……案外、暇なの?」
「来ない事で気に入られなければ、被害は相当な額ですので。気に入られたい方はおいででしょう。それよりも、私の用件ですが、アパートから持ち込まれた服はおやめくださいますよう…。実知がお手伝い致しますので、清楚で上品な物を着用下さいます様に…。」
「私の服が、不潔で下品だと言いたいの?」
「いいえ?少々、貧乏臭いと申しております。」
カチン、とした顔をする。
「いちいち、人の神経を逆なでするのがお好きみたいですね?」
「いいえ、決してその様な事は…。しおり様にだけで御座います。」
軽く頭を下げて部屋から出て行く。
ベッドまで歩き、クッションを手にしてドアに投げる。
「私が事故を起こしたから、しおりじゃないから…いちいち、喧嘩売るんでしょうね!」
腹は立つが、言ってる事は間違いではない。
ここに本物がいれば、渡瀬も苦労はしないのだろうと、少し考えた。
本物は可愛いかった。
顔の作りは大して違わない様に思えたが、動きや表情、話し方もおっとりしていて、何処か上品で可愛かった。
言われてみれば、お嬢様、血筋かぁと納得できた。
働き出してお給料をもらっても、しおりは無計画でお金を使っていた。
必要な分を取り余れば好きに使う。
「ちょっと、しおり~。こんなに買って、勿体無いわよ?」
「二人で使えるわ?」
「これは?バッグなんていらないでしょ?」
「ええ~流行ってるのよ?」
その度にどれだけ注意したか分からない。
そんな所も……可愛いかった。
私とは、見かけは似ていても性格はまったく違っていた。
しおりは甘え上手で、施設の先生方にも可愛がられていた。
私は甘えられずに、隅に一人でいるタイプの子どもだった。
泣き顔を見られる事も嫌で、泣く時はひとりで誰もいない場所を探しては、移動して泣いていた。
しおりは、私が居なくなると探しては見つけ、泣いている私の横に座り、黙って手を繋いでくれていた。
泣き止むまで何時間も…。
しおりから隠れるのを辞めたのは、いつも彼女が探すからだ。
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