渡り鳥

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

渡り鳥

 私の地元には小さな湖があり、冬になると渡り鳥がやって来る。  幼い頃はもっと多かったが、姿が美しいため、密漁などのせいで数が減り、今は絶滅危惧種に指定されている。  土地の人達は皆それを知っているから、湖周辺の環境を整え、鳥達が住みやすい場所野辺地に勤めていた。  中でも、数年前できた保存会の働きは素晴らしく、この一、二年は、湖に渡ってくる鳥の数が増大傾向にあるらしい。  一羽でも多く鳥が増え、群れが賑やかになってくれるのはいいことだ。  でも中には、増えたのなら少しくらい獲物にしてもいいのでは、と考える人がいるらしい。  数が増えてきたという嬉しいニュースが報じられた後、密漁者が仕掛けた罠が多く見つかるようになったという話が聞こえてきた。  地元民も保存会も一丸となり、罠の排除や密漁者の取り締まりをしているけれど、向こうも諦めないらしく、現状はいたちごっこだ。  私も何か力になりたくて、湖の近くを通る時は注意深く周りを見回し、おかしな真似をしている人がいないかどうかを窺うようにしていた。  そんなある日、私は密猟者らしき人物を発見した。  水辺で何やらごそごそしている。どうやら罠を仕掛けているらしい。  今すぐ飛び出して注意を使用か。でも向こうは大人の男の人だ。中学生の言葉なんて聞きそうにないし、暴力を振るわれる可能性もある。  そうだ。スマホに登録してある保存会の受付に連絡を入れよう。後は密猟者の写真や罠の仕掛けられている位置を撮影しておけば、それが手掛かりになって何とかしてもらえる。  慌てて懐からスマホを取り出す。その時、誰かが密猟者らしき男の人に近づいた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!