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それでも、私は怯むことなく、続けた。
「あなたなんでしょう? 正直に言ってくれたら、警察にも連絡せずにいますから。ちゃんと何か理由があるならおっしゃってください」
そう私が言うと、私よりも高い背丈から、目を伏せて、
「……実はこの本たち。ここで買ったものなんです」
「え?」
私は呆気にとられた。一体、どういうことなのだろう。確かに、今まで受け取った本は、私の店でも取り扱ったことのあるものばかりだ。私はよくわからなくなり、彼に言う。
「どういうことですか? うちで買った本をなぜ、今、こんな形で置いていくんですか? やっぱり、営業妨害ですか……?」
すると、彼はかぶりを思い切り振って、
「違います! 確かに、何も言わず、置いていってしまった僕は、悪かったと思います。でも、ここに返したかったんです」
彼は、どこか瞳を濡らしたまま私に言う。その顔をとても悲しそうで、ただいたずらでやっているようには思えない、真剣さがあった。
私は、ひとつため息を漏らすと、彼に優しく、
「怒らないので、ちゃんとした理由があるなら言って下さい」
言うと、彼は、目を手で拭うと、話出した。
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