ポツンと置かれた本たち

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 それから私はまた同じ日々を繰り返し過ごしていた。  高い場所にある本は、私の長年、レジの前でかがんだ姿勢で読書しながらお客を待っていたせいもあり、腰が曲がってしまって、なかなか手が届かなくなっていた。  高い場所も掃除をしてやりたいし、お客さんに言われたら、すぐ取ってあげたいと思うが、なかなかうまく接客もできなくなっていた。  それから、ドン・キホーテが置かれていてから一か月が経ったその日。  また週刊誌の平置きの上に、絵本が置いてあった。 『星の王子さま』  その本も、ところどころ、くすんでいて、綺麗な白い装丁も、汚れていた。 「また忘れものか。前のドン・キホーテも忘れたって人、いなかったしなあ……」  私は、ため息をひとつ吐くと、シャッターを閉めてまたその絵本を持って店の中に入った。  そんなことがもう、半年続いていた。  私の手元にあるのももう六冊になった。  私は店に来てくれるお客さんたちに、「忘れ物の本はありませんか?」と訊ねたり、店に張り紙をして、「本の忘れ物預かっています」とレジに貼っておいた。  しかし、全く、落とし物の持ち主は現れなかった。  私はなんだか気持ちが悪くなって、ここまでくると、嫌がらせだと思い、その犯人を突き止めようと、いつも本が置かれる、十三日に、私は張り込むことを決めた。  朝の店頭に並べる雑誌や、店前の掃除のときはいつも、その古本は置いていない。  となると、私がレジにいる時間帯になる。  たまに、椅子から立ち上がって、痛む腰を後ろにひねって、柔軟体操をする。それから、店内を見回ってみたり、掃除をしてみたりするのだが、その時に、不審な人を見たこともない。  確かに、外に週刊誌や雑誌が置かれているから、その前で立ち読みをする人は見かける。  でも、それも、レジから窓越しに見える。いつも立ち読みする人は決まっていて、学生が多い。それでも、本を広げて読んでいる様子はわかるから、何か不審な動きをしたらすぐわかる。  もしも、何も顔に表情を表さず、立ち読みしながら、古本を置いているのなら、それはものすごいポーカーフェイスだ。それに、十三日に同じ人が立ち読みしているのを連続して見ているか、というとそうでもない。  
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