ポツンと置かれた本たち

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 そもそも、十三日に置かれる、と判明したのも、三度目に置かれた日だった。それまでは私は全く日にちなど気にしていなかった。  それに、ただの忘れ物だとも思っていた。  流石の私もこれだけ続くのはおかしいと思っていたが、続いて三度、やはり十三日に置かれていることに気付いた。  一番妙だったことがある。  その日は、うちが休業日の日だった。私は不定休にしていて、売れ行きの良い週刊誌が出るときは休みを取らない。しかし、その日の十三日は、翌日、十四日の朝、店を開けようとしたとき、ひっそりと、シャッターの郵便入れに、小説が挟まっていた。 『宮沢賢治 詩集』  それが、挟まっていた。それが、四度目のときだった。  私はここまで徹頭徹尾、十三日にこだわるのが、妙に気持ち悪くなった。  きっと犯人は愉快犯で、私をからかって楽しんでいるのでは?  そう思うようになっていた。  だから今日、七回目のこの十三日。私は、レジにいるのではなく、入り口付近に椅子を置いて、犯人の顔を絶対拝むんだと、息巻いていた。  ずっと椅子に座っているのも、犯人を警戒させるかと思い、時々立っては、店内を回る。そうこうしていると、夕方になった。  お客さんも、この日、三人だけ、店内に入ってきた。その接客もしていたが、始終私は窓の外に目を配っていた。  夕方になって、あと一時間で閉店となるときだった。  窓から週刊誌の置いてある場所に近づいて、すぐ離れた若い男性がいた。  私は、なんとなく、近づいてすぐ離れたのが異様に感じて、腰が痛む身体を起こして店の外へと駆け出した。  そして、週刊誌の置いてある場所を見ると、やはり、そこには古本が置かれていた。 『アルジャーノンに花束を』  表紙もないその小説を私は掴むと、その男性に向かって叫んだ。 「すみません! あなたでしょう、いつも古本をここに置いていくのは!」  私が彼を睨んで言うと、彼はびくり、と肩を動かしてその場で止まった。  私はそれを見て、彼に近づいた。 「困るんですよ、こういうことをされると。毎月毎月、同じ日に、こうして古本を同じ場所に置いていく。うちは、ごみ箱じゃないんですよ?」  私がきつく吐くと、彼はおそるおそる振り返った。その顔は唇を強く噛んで、今にも泣きだしそうだった。
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