山奥の地

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 自分は5年前、父の死によって、片田舎の山中にある、荒れ果てた土地の一画を相続した。一度売却による処分も検討したが、あまりにも辺鄙な場所に加え、中途半端な広さも災いし、なかなか買い手がつかずに難航した故、途中でそれを断念してしまった。それ以後は、とりあえず所有しているという状態が、今も続いている。    しかしながら、年に一度、所有者としての最低限の責任は果たすべく、近くの温泉に一泊がてら、その土地の様子だけは、見に行くことにしている。実はこれが、憂鬱極まりないのだ。なぜならそこが、不法投棄のパラダイスになってしまっているからだ。5年前まではそうでもなかった。だが、所有者がほったらかし状態にしていることをいいことに、年々状況が悪化し、2年前だろうか、誰かがスクラップ寸前の自動車を置き去りにして以降、その傾向は増々強くなってしまった。俺の土地はゴミ捨て場じゃねぇーんだぞ!!  今年も、来てしまった。予想通り、更にひどくなっている。「ふーっ」とため息を一つ吐き、一体この有様にどう対処していいものか、悩んでいると、 「ひどいなこりゃ、日本人のマナーもここまで落ちたか」  知らないうちに、男がすぐ横に立っている。 「これ、あげるよ、使ってみな」  何やらスプレーのようなものを、自分に手渡してきた。 「その中の液体を、この土地一帯に吹きかけるんだ。そうすれば・・・・」 「?」 「今ここにあるゴミが全て、ゴミじゃ、なくなる」  ・・・ゴミじゃ、なくなる?  気付けば男は、消えていた。  言われた通り、土地の中に足を踏み入れ、辺りにまんべんなく、そのスプレーを吹きかけてみた。するとどうだろう、ありとあらゆるゴミが鮮やかな色を取り戻し、あっと言う間に、新品同様に甦ってしまった。 「これはスゴイ!!」
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