山奥の地

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 空き瓶、空き缶の類は、中身が復活し、食料飲料として通用する。他にも、服、傘、鍋、ソファ、家電製品、全てが、買って来たその日の様な状態に戻っている。自分で使えるものは使って、そうじゃない物はリサイクルショップに売って、金にすればいい。自転車もある、そうだ、車はどうなった・・・、おっ、まさに新車そのものじゃないか、す、すばらしい。その時だった、自分の背後で、物音がしたのである。見れば全身泥だらけの50歳位の男が、ブツブツ言いながら、手で体の泥を払っている。まるで、今まさに地中から出てきたかのように・・・。 「クソッ、あいつら絶対に許さねえ」 「?」  自分を見て、男は、 「わりい連中に騙されてよ、殺されて、ここに埋められたんだわ、半年前に」 「!?」 「どこかな、ここから一番近い警察署」 「・・・さあ」 「ま、いいわ。あ、とりあえずさ、あそこのあの自転車、貸してくんない。アレ乗って、自分で探しに行ってくるわ」 「あ、どうぞどうぞ」  そして男は自転車にまたがり、緩やかな山道を、惰性にまかせて下って行った・・・。  そんな男の去って行く姿を見送りながら、この数十分の間に起きた、一連の理解不能な出来事に呆気に取られていると、不意に、目から一筋の涙がこぼれ落ちたのである。  自分の父は、一人実家で倒れ、誰にも気づかれないまま逝ってしまった。この、今感じている心のざわつきは、あの時絶え間なく自分を襲ってきた、自責の念と全く同質のものだ。  全く、ありとあらゆる色んな物が、甦ってきた。
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