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息が白くなり手足の指先がかじかむ頃、 僕は彼の目の前の席になった。 今まで彼より前の席になったことはなかった。 これでもう見ることもない。 そう思っていたのに無意識に全神経が背後に集中していた。見ようとしても何も見えない事が不安だった。急に息の仕方も分からなくなった。 とても苦しかった。 でも、それでも席を立とうとは思わない。 彼の気配を常に背中で感じていたかったからだ。 しばらくしてイヤフォンをするようになった。 音楽に興味はない。 ただ、少しでも平常心でいるために。 席を離れればいいことだけれど、彼が席にいる間はそばにいたかった。 プリントを後ろにまわすと指が触れた。 時に重なることもあった。 一瞬でも僕の指は敏感になり撫でる様な感触が恥ずかしくて、彼の時のように赤くなった項が見られているんじゃないかと気になりそのたびに前屈みになり首元を手のひらで覆った。 たまにカサカサとホッカイロを振る音が聞こえた。 風邪をひいたのか鼻を啜る音も。 熱が出てないかと心配になったが、案の定何も出来なかった。 そしてある授業中、窓の外を見ると雪が降っていた。 彼もそれを見ている気がした。 聖なる夜は彼とあの子にも訪れるんだろうな。 静かにそう思った。 お互いちゃんとした話もした事ない。 ただのクラスメイトでありただ前後の席なだけ。 それでも良かった。 それだけでも、良かったんだ。
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