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窓の外の木々の葉が赤や黄色に色づき始めた頃、
僕は彼の二つ後ろの席になった。
プリントをまわす時に見える横顔が見切れる様になった。当てられて焦りながら立ち上がる時しか項も見えない。
彼が居眠りしている時に立てた音を自然にカモフラージュしてあげる事も出来ないし、弁当の匂いでおかずを当てるゲームももうできなくなった。
ただ、次第に離れて良かったと思うようになった。
今は、彼の耳が赤くなるのはある子の前だけだ。
肩が強ばり、声のトーンが少し上がって首筋が色づいた。
ああ、そうか。
それがどういうことかすぐに分かった。
それから彼を見る時間が少なくなった。
なぜか、見ないようにしていた。
学校にも行きたくなくなった。
なぜか、考えないようにした。
ーーーー彼の全てが辛くなった。
誰よりもそばにいたのに
あんなに余すことなく見ていたのに
彼の背中だけを。
あの子も彼を見ていた。
正面からの彼を。
彼もまた……。
次第に彼は席を離れるようになった。
向かうのは同じ場所。
僕も席を立つようになった。
向かうのは彼と彼女がいない空間。
少し大きめの合服に袖を通す頃には、通学路を2人で歩く見慣れた背中があった。
「……振り向け」
呟いたが木枯らしが一瞬でさらって行った。
なぜか、泣きたくなった。
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