潜入

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仲間がいると分かり、途端に緊張が解けた。 話を聞くとやはり同じ組織から派遣されたらしい。 施設が広く、充分な成果も得られないままだったから探索を続けていたということだ。 そこで情報交換も兼ねて今後について話し合うことになった。 といっても俺のほうから提供できるような情報はないので聞き役に徹する。 「――ということだ。地下に続く道は全て封鎖されている」 「生存者はいないのか?」 「分からない。所員の名簿があれば照合できるかもしれないが」 「コンピュータも大半がロックされていて操作を受け付けないんだ」 聞くところによるとここは薬品の研究をおこなう施設だったらしい。 何らかの事故が起こったのは確からしいが、原因はまだ分からないとのことだった。 連絡が途絶え、生存者も不明……。 ヤバい研究をやっていたのは間違いない。 そんなところに遣わされたんだ。 これは報酬の上乗せをしてもらわないと割に合わない。 「ところでお前たちはなんで防護服を着ているんだ? そんなもの支給されなかったが、どこかにあったのか?」 俺が訊くと場の空気が変わった。 彼らは互いに顔を見合わせ、それから俺に憐れむような視線を投げかける。 そのことに触れるな、と言いたげな反応だ。 「なんだ、訊いちゃいけないことなのか? 情報共有するんだろ?」 そう言っても答えは返ってこない。 「それはその……なあ?」 マスク越しでも見える連中の愛想笑いに苛立つ。 なんだか仲間外れにされたような気分だ。 「なんだよ、ハッキリ言えよ。言えないような――」 そうか、分かったぞ。 こいつら、何か重要な秘密をつかんだにちがいない。 俺に手柄を横取りされたくなくて黙っていやがるのか。
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