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「言っていいのか?」
連中はひそひそと話し合っている。
バカバカしい。
俺だって仕事にはそれなりにプライドを持っているんだ。
手柄を横取りするようなせこい真似なんてするもんか。
「教えるくれてもいいだろ。お前たちの功を奪ったりしないさ」
そう言うとやっと信じてくれたのか、ひとりが話し始めた。
「言いにくいことなんだ。でもきみが知りたいなら……」
「いいから言えって。余計に気になるじゃないか」
連中が向ける視線が気に食わず、つい声を荒らげてしまう。
俺が何の収獲もないからバカにしているような、そんな目だ。
「きみは……ウイルスに感染してるんだ」
「なんだって?」
「我々は防護服を着ているから感染せずに済んだが、その格好で入ってきたあんたは間違いなく感染してる」
まるで俺が丸腰みたいな言い方をする。
これでもあらゆる事態を想定して入念に準備してきたつもりだ。
懐に拳銃を隠し持っていたところでたしかにウイルスに対しては役に立ちそうもないが……。
それにしてもウイルスだと?
「感染したらどうなるんだ?」
「あれだよ」
男がカプセルを指差した。
「きみも見ただろう? 感染すると24時間以内に症状が出始める。額に無数の斑点が現れるんだ」
「あれに入ってるのはここで働いていた連中さ。あちこちで倒れていたのを運び込んだ。棺代わりにしたが元々、何のために使うものかは分からない」
イヤな感じがした。
こいつらの話を信じたくはないが、聞いてしまうと体がむずむずする。
全身を掻き毟りたい衝動をどうにか抑える。
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