潜入

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「感染したらどうなるんだ?」 俺はもう一度訊いた。 だが知りたいのは症状じゃなくて結末のほうだ。 「………………」 誰も何も答えてくれない。 それが答えになった。 死ぬのか、と問うと4人は譲り合うようにして頷いた。 「何らかの事故が起こり、ウイルスが漏れた。連絡が途絶えたのも所員らがほぼ同時に感染したからだと見ている」 4人はこれから事故の原因を調査するという。 「そんなバカなことが――」 あってたまるか、という気概はない。 その仮説を否定できる材料がここにはひとつもなかった。 「このカプセルがどういう目的で作られたのかは分からんが、作った奴らの棺になるなんて皮肉なものだよ」 誰かが恨めしそうに言ったが、俺にはもう皮肉ですらない。 俺だってこの中に――。 入りたくはない。 「ワクチンぐらいあるだろ? それを打てば――」 「残念だが見つからなかった。あるとすれば地下だが、まず封鎖を解除しなければ」 「じゃあそうしろよ! いや、俺も手伝う! だから早く――」 急かす自分に気付く。 なぜこいつらはそうしない? 俺が言うまでもなく、助かる可能性があるなら行動するべきじゃないのか? それをしないのは何故だ? 「多分、間に合わない」 またふざけたことを言いやがる。 「さっきも言っただろう。コンピュータはロックされている。まずそれを解除する必要があるが、ここにはその方面の専門家がいない」 「なら本部に応援を頼もう。事情を説明すればすぐに寄越してくれるだろ」 彼らはかぶりを振った。 「時間的に無理がある。症状が出るのが先だ。もし進行したら――」 カプセルのほうを見て彼は言った。 「彼らは自分の体をひどく傷つけていた。おそらく進行すると苦痛に苛まれるのだろう。激しい痛みか、それとも痒みか……多分――」 耐えがたい苦痛であることは間違いないという。 「だからきみには気の毒だが――」 そいつは恐ろしいことを言った。 「今すぐに死んだほうがいい」
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