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変な痛みで目が覚めた。
さっきから頭がズキズキする。
たまらず、俺は体を起こした。
ぼんやりした視界の中に大きな扉があった。
ここはどこだ?
何か大事なことがあったはずなのに、なかなか思い出せない。
たしか俺は、組織からの命令で……。
思い出したぞ。任務の途中だ。
ある研究所の様子を探りに行くところだったんだ。
それで車の中で寝ていて……。
いや、ちがうな。
研究所には入ったはずだ。
それで誰かに会ったんだよな。
そうか、今度こそ思い出したぞ。
ウイルスが漏れていて、俺はそれに感染したんだった。
それで症状が進行する前に死を選択したはずだが……なぜ俺は生きてるんだ。
「……どうなってる?」
俺は部屋を出た。
あの4人は……たしか扉越しに俺を見ていたな。
だが彼らの姿はなかった。
催眠ガス発生装置ももちろん停止している。
どうなってるんだ。
「ん…………?」
足元に何か落ちている。
折りたたまれた紙だ。
手紙だろうか?
俺はゆっくりとそれを開いた。
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君がこれを読んでいる頃には、我々はもうこの世にはいないだろう。
手荒い真似をして悪かったが、そうするより他はなかった。
我々は、きみより一日早くここの調査に来た。
調べを進めているうちに危険なウイルスが漏れている事を突き止めた。
慌てて防護服を着用したが、もはや手遅れだった。
すでにウイルスは体内に侵入していた。
施設内に蔓延していたウイルスは全て駆除したが、一度、人体に入り込んだウイルスを取り除く術はない。
きみが一日遅れてやって来たのは幸運だった。
そうでなければ、今ごろは我々と同じ運命をたどっていただろう。
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