episode.1

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「よし、今日のHRは終わりだ。気をつけて帰れよー」 担任のその言葉を合図に、ガヤガヤと騒がしくなる教室。 私はと言うと、誰と話すでもなく、無言で帰る支度をする。 そんな私の前の席で、大きな声で話す女の子達。 「ねぇねぇ!今日カラオケ行かない?私割引券持ってるの!」 「え、まじか!もちろん行くー!」 「莉奈も行くでしょー?」 「ごめーん!今日は彼氏とデートなの♪」 「えー!てか、あんたこの前彼氏と別れたんじゃかったー?」 「まじ!?莉奈ってほんと長続きしないよねぇ…」 「だってぇ、なんか飽きちゃうんだよねぇ~」 (飽きるような相手なら、最初から付き合わなければいいのに…) ぼんやりと彼女たちの話を聞きながら(聞くと言うよりは、耳に入ってきた、という表現の方がしっくりくるけれど)私はそんなことを考えていた。 「…ただいま」 家の鍵を開け、小さな声で呟く。 その言葉に『おかえり』と返してくれる人は、いない。 でも、もうそんなのには慣れた。 制服からスウェットに着替えて、ベットに横になる。 両親は、私がまだ幼い頃に離婚した。 親権をめぐって、毎日毎日口論になる父と母。 どちらが親権を〝もらうか〟ではな く… どちらが親権を〝もらわなければならないか〟。 私は幼いながらに、わかっていた。 両親にとって、私は邪魔、なのだということを…。 だから私はこう言ったんだ。 【パパ、ママ!ミキね、アリサちゃんのおうち行きたい!】 無邪気な、ニコニコとした子供らしい笑顔で…。 両親は、内心〝ラッキー〟だと思っただろう。 親権を放棄してしまったら、世間体が悪い。 でも、 〝美希が有紗ちゃんの所へ行きたいと望んだ〟 その事実があれば、誰からも責められることはないのだから。
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