第1夢

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“白馬に乗った王子様がどこからともなく現れ迷える女の子の私を救ってくれる” 私はこんな平和な日本でもそんな人が私の前に現れてくれると信じています。 正直白馬なんて一度たりとも見たことがないですけどもね、ええ。 そこはほら、空気を読んで高級なスポーツカーとかに早変わりしていただいて。 だって馬なんて日本で乗り回したら道路交通法やら何やらで大騒ぎでしょう? そんなので警察にしょっぴかれる王子様なんて笑っちゃう。 はぁ、つまらない世界。いつまで経っても私の王子様は現れない・・・。 私の大好きなゼオン王子とかカイル王子もこの世界には存在しない。 「ほんと・・・生まれるべき次元を間違えたわね・・・。」 クラスの男子も芋ばっかりだしこんな小さな町じゃ出会いの欠片もない。 どこかに私の心を存分に奮わせてくれる刺激がないかしら・・・。 塾からの帰り道、そんなことを考えながら歩く奈緒はこの世界にひどく辟易していた。 「・・・・ねよ!!」 「・・・ぇがくたばれや!!」 奈緒が近くの公園を歩いていると、近くで怒声が聞こえてきた。 暗くてよく見えないがどうやら喧嘩らしい、殴り合っている鈍い音が響いている。 「いやいや・・・さすがに物理的な刺激はちょっとね・・・。」 苦笑いで距離を取り逃げようと試みる奈緒であったが・・・。 「おい、何見てんだよてめぇ。」 「(ド定番な台詞来たわね・・・そして案の定見つかったわね・・・!!)」 気が付くと奈緒はあっという間に10人程に囲まれてしまった。 「何だこの芋女。」 「こいつがじろじろこっち覗いてたもんで一応。どうしますかこいつ。」 「テキトーに処分しとけ、殺さない程度にな。」 「学校に通報されたらめんどうっすよこいつ制服だし中坊でしょ。」 よからぬ言葉が飛び交う中恐怖に震える奈緒。 「(よく見たらこいつらこの辺で有名な不良グループ《紅蓮》だ・・・!)」 逃げるか?逃げたところでこの鈍足で逃げ切れるわけもない・・・。 いよいよ人生の最大のピンチ!? こ、こんな時颯爽と助けに来てくれるのはゼオン王子かカイル王子・・・! そんな時口から出た言葉は・・・ 「私に手を出すとゼオン王子もカイル王子も黙ってないわよ!!」 一瞬にして凍る空気、絞り出す言葉の選択肢を間違えたことはすぐに分かった。
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