一章 消えたペーパーナイフ

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「それで、ヘレナさん、さっきの話の続きですけれど」  子供達がパンとシチューに気を取られている間に話を切り出す。 「今日俺がエイザ達を保護することが分かっていたんですか?」 「今日かはともかく、近いうちに見つけてここに連れてくるだろう事は分かっていましたよ」 「でも、俺が人捜しをしていると言うことすら話していませんでしたよね?」 「それくらい、この部屋の様子を見れば一目瞭然ですよ。台所には食材が積まれ、少し前までソファーの上に出しっぱなしにしてあった書類が無くなっている。と言うことは、誰かをここに連れてくるつもりだと言うことは、ユリアスの性格を知っていたら誰でも分かりますから」  いや、それを分かるのはヘレナさんくらいだ、と言いたかったが、止めておく。代わりに、 「それで、エイザ達を今日からしばらく預かってもらおうと」 「最初からそのつもりです」  ヘレナさんはにっこりと笑い、請け負ってくれる。 「それで、エイザさんを、いつまで預かることができるのですか?」 「今日も含めて一〇日、それが依頼の期限です。それを越えても確証を得られなければ」 「わかりました」  ヘレナさんはそれ以上俺に言わせず、頷きで応えた。
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