一章 消えたペーパーナイフ

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 光ある所に闇があるように、繁栄の影には切り捨てられる者達も現れる。ここにいる子供達は、その存在を抹消され、打ち棄てられた孤児達だ。その理由は様々だ。隣国の戦争により親を亡くし、ここまで逃げてきた者。享楽に溺れた結果、望まぬ子供として捨てられた者。事業に失敗し、親に置き去りにされた子供もいる。大抵の子供は生き残ること適わず、野垂れ死ぬ運命だ。  可哀想だとは思うが、俺にはどうすることも出来ない。しかし子供のうちはまだマシかもしれない。運良く大きくなっても、その先に待つのはごろつき、ならず者、やくざ者、大半がろくな大人になりはしない。  一度落ちてしまえば這い上がることを許さない、そういう世界なのだ。  それでも、戦争が行われていた時代はまだ良かった。戦闘がある以上、兵士としての需要はどのような者にも存在したのだ。ある者はゲルニアの徴兵に参加し、ある者はニュートリアの兵士として戦った。しかし一年前、長きにわたった両国の戦争に休戦協定が結ばれた。どちらも疲弊しすぎ、戦線を維持できなくなったのだ。かくして世の中は平和になり、俺たちの様な一般人の上には大きな爪痕を残した。
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