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自分が美人でないことは、私自身が一番よく知ってる。
鏡に映るのは、眼鏡をかけた地味な高校生の女の子だ。しかもちょっと太ってる。痩せようと頑張ったこともあるし、せめてコンタクトにしようと努力したこともあるけどどっちも結局うまくいかなかった。世の中には残念なことに、怖くてどんなに時間をかけてもコンタクトひとつ目にいれることができず、仕方なく眼鏡をかけるしかなかった女子というのも存在するのだ。
鏡の中の自分を見て、今日もため息。やっぱり、可愛くない。
化粧はするし、髪型も整える。服装だって地味なりに、毎回お洒落に見えるものを全力で選んでる。でも、それだけだ。雑誌の中のモデルとは月とスッポンどころの騒ぎじゃなく、いつだって比べれば比べるほど疲れた気分にしかならないのである。
そしてそれは、彼とデートするようになってから余計にそう思うのだ。
明らかに、私と彼では釣り合っていない。彼はすらっと背が高いし、手足も細くてとってもキレイだ。顔立ちも、彫りが深くてまるで芸術品でも見ているかのよう。一般的なイケメン、というのとは少し違うかもしれないが、私のような喪女が連れて歩いていいレベルの男子でないことは明白である。
――なんで、彼が私なんかと付き合ってくれてるのかわかんないけど。……見た目で勝負できない分、他で全力で頑張らないと。
美人な女の子は、それだけでお得だ。多少失敗しても残念なところがあっても“ 美人だから”で許されてしまうところは少なからずあるのだろう。
でも、デブスは違うのである。見た目が残念なところを、他の面でどうにかして挽回しないといけない。でなければ、あっという間に飽きられて捨てられてしまう。彼がこっちを見てくれているうちに、全力でポイントを稼いでおかないといけない。私にだって、ちゃんとイイトコロはあるんだって、そう思わせたいし――私自身も思っていたいのだ。
彼が私に向けてくれる優しい笑顔も、デブスで奥手な私を初めて真正面から見つめて抱き締めてくれた手も。全部全部ダイスキすぎて、他の誰かに渡したくなどないのだから。
――顔も残念なのに、私ってば中身も残念すぎて笑えるわ……。独占欲強すぎ。重すぎ。知られたらすぐフラれるよ、こんなの……。
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