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そう、意気込みは充分だった、はずなのだけど。
――どうしてこうなっちゃうの……!
映画が始まるはずの時間になっても、私達は映画館のある駅に辿り着いていなかった。
別の路線の、映画館のある駅の隣駅で私は途方に暮れる。横で彼が電光掲示板を見上げて呟いた。
「あー……京浜東京線も止まっちゃってるみたいだね、これ。山下線が止まったから混雑で人が溢れちゃって、駅は入場制限だってさ」
「そ、そんなぁ……」
余裕で映画館に到着するはずだったのに。乗るはずの路線が、人身事故で止まってしまい。仕方なく遠回りをして別の路線に乗ったら、今度はそっちが信号トラブルで遅延する悲劇。それらをどうにか回避した結果、やっとの思いで隣駅まで来たものの――最後の頼みの綱だった路線は混雑しすぎて駅が入場制限を食らってしまっている有り様である。
既に映画は始まってしまっている。その上、これでは映画が終わる前に隣駅に辿り着ける保証さえなくなってしまった。
私は流石に泣きそうになる。彼に喜んでほしくて、精一杯のデートプランを考えてきたのに。どうしてカミサマは、私の予定をそこまでして邪魔したいのだろう。そんなに私の考えたデートに失敗して欲しいのか。失敗して、私の印象が悪くなって、彼にフラレてほしいと願っているのだろうか。
そういえば、空模様も少し怪しい。今日は雨は降らないと予報では言っていたのに。少しでも嫌な思い出の日にして、私に思い知らせようとしているのか。彼のような素敵な男性に、私のようなデブスはまるで似合わないから諦めろ――と。
――そんなのってないよ、カミサマ。デブだって、ブサイクだって、好きな人と一緒にいたいよ。好きな人に喜んでほしいんだよ。それの何がいけないっていうの……!?
「ミカ」
俯いた私の肩に。ぽん、と置かれる手。
「俺だって、ミカを楽しませたいって思ってたけど。それでもデートプラン、ミカにお願いしてきたのはどうしてだと思う?」
「え……?」
「ミカに任せっきりにするのは申し訳ないって思ったけどさ。それでも俺……ミカがそうやって俺のために頑張ってくれるのが、すっごく嬉しかったから。頑張ってるミカがめっちゃ輝いてたからだ……って言ったら、信じてくれる?」
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