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memory
『ほんとはね、葵の事好きだったの』
『でも、僕‥‥。』
『一週間後、夏休み入っちゃうでしょ?私ね、転校しちゃうの。だから、お願いだから。少しの間、私の彼氏になって』
死物狂いで伝えた。
自分の都合を、押し付けてでも、やっぱり、葵と
付き合いたくて。
だけど、
『自分の気持ちに嘘はつけないから。』
『ごめん。』
あっさり振られちゃった。
「お母さん、ただいま。」
「あら、久々にお友達に会えた?」
「うん!」
「良かったわね、夕食は作ってあるわよ、食べ終わったらお父さんが仕事から帰って来る前にお風呂に入りなさい。」
「はい。」
お母さんは、台湾のドラマを見ながら、整理整頓アドバイザーの資格の勉強をしていた。
私のお母さんは、地頭だから。
高卒だけど、要領は良くて、都内の私立の情報処理科を主席で卒業している。
お父さんは、派遣の弁護士で、帝都大学の法学部出身。病院の秘書として、今は派遣されて。
親は、比較的高学歴なのに、決してお金持ちという訳でもなく。
むしろ、お父さんは、派遣の仕事をしているから、
給料なんて不安定。次の仕事を探しながら、今の仕事場に務めている状態だ。
お母さんは、パートをしているから、基本的には家に居ない。たまに家に居るときは、勉強をしてる。それ以外の事をしている姿をあまり見たことがない。
私は、お父さんと同じ帝都大学を目指しているけれど、模試ではいつも、C判定だ。
お父さんもお母さんも、勉強なんてしなくていいって言ってはくれるんだけど、私には、やりたいことも、やるべき事も見つからなくて、目の前にあるノルマをこなすことしか思い付かないから、ひたすら勉強だけしていた。
誰もあてになんて出来なくて、
自分の力を信じられるまでには成長したかった。
自分の事は結局裏切れない。
他人に裏切られるのは、あくまでも、他人の課題だから。だって、裏切る行為は、相手の決断なのだから。
他人は、コントロール出来ないのかも知れない。
でも、自分自身の心ならなんとかなるんじゃないかな?
だからね。
頼るあては結局自分なんだよ。
私だって有るもの。
大事な人を傷つけた事だって、裏切った事だって。
一番良く分かっているから。
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