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京都の夏は暑い。ものすごく暑い。
四方を山で囲まれたこの土地は、まるで巨大なフライパンのように太陽の熱を逃がさないのだ。特に祇園祭がある7月の京都はそんなフライパンの土地に、これでもかと言うほどの観光客が、全国どころか全世界から押し寄せてくる。
そして京都は、満員電車をそのまま蒸し風呂にでもしたような最悪の状態に突入するのである。小野に言わせれば、まさに地獄絵図である。
「こんな暑い土地に、わざわざ都なんてつくらなくて良かったのに」
昔の人間の気が知れない、と灼熱のアスファルトを苦々しく見つめながら小野は大きくため息をついた。
四条大通りの人ごみを避けるかのように細い油小路通りへと入り、町屋風家屋の軒先の日陰へと座り込む。
どこにでもいるような平凡な少年である。歳の頃は十六、七といったところか――Tシャツにジーンズというラフな格好から見ても、地元の人間に違いなかった。背はそんなに高くないが、全体のバランスが良いのですらりとした印象がある。気負ったところのない顔立ちは、人好きのする穏やかさと不思議な透明感を持っていた。
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