プロローグ

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「私はまだ、普通の少女のように見えますか」  ルカがぽつりと呟くと辛そうにうつむいた。 「どうかな。もう一度よく、顔を見せてくれ」  穏やかな声に導かれるように顔を上げると、ヴァン司教の見守るような瞳があった。  もし自分に父親がいれば、こんな人だったのだろうかとルカはぼんやりと考える。 「いや、失礼。普通ではないな」  司教は微笑むとこう続けた。 「普通よりもずっと、可憐で心優しい少女に見える」  ヴァン司教の言葉には、ルカへの温かな心遣いに溢れている。 (本当に有難いお言葉……でも……)  その優しさに、今のルカは喜びよりも先に苦しさを感じてしまうのだった。  刹那。  フラッシュバックのようにルカの視界は赤く染められる。  馴染みのある懐かしい瞳がこちらを見ていた。恐怖と驚愕に囚われた眼差しで。その男の胸に打ち込まれたのは、ルカが放った聖銀の銃弾。  ひどく緩慢な時間の中で、男は死という暗黒の影に絡め取られていく。  その姿はすでに人間ではない。彼には邪悪な悪魔が宿っていた。  ルカにはそれが分かっていた。分かっていたのに――。  銃弾に倒れたのは、しかし悪魔ではなく。  奇妙な感覚の中でルカはかつて人間だった『何か』に近づく。
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