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箱庭戦争
檻に囲われた世界で生きる僕達は、日々の苦しみから逃れる為に他者を傷付ける。
人々の口から放たれる銃弾で空いた風穴に優しさを詰め込むが、どうにも塞ぎきれる程の量を持ち合わせていない。
心此処に在らず。
虚空を見つめて隣を歩く友人の目玉は、蒼白い顔をした人間が奪っていった。
穴ぼこの体を見下ろして、ついに喉から這い出た僕の言葉達は鉛色の体表をした、鼠となって散らばった。それらは他人の安寧や平和を、後ろから削り取っていく僕の兵器となる。
この、逃げ場のない戦場で生き残る為の武装の1つだ。
友の目を取り替えそうと鉛色の兵器を差し向けるが、何せ人間の数が多い。
すぐに見付ける事は不可能だから、僕は灰色の濁流を送り続ける。
こんな危険で溢れる世界だが、僕はまだマシな方だろう。
並び立てる友が居るのだから。欠片も信じては居ないが、話し相手が居るだけでも満足だ。
真っ赤に染まった友の双腕が振るわれる、目の前に居た人間は枯葉の様に飛び上がり切り裂かれた。
直接に他者へ影響を与えるそれは爪だ。嘘を吐き続ける事で成長し、他人を寄せ付けたりはしない迎撃装置。
僕に当たらないのは、小さいが同じ爪を持っているからだ。だから僕は、この爪を持つ人間を優先的に消していく。鉛色に染め上げられた人間に逃げ場などは存在しないから、小さな弾丸程度ではもう止められない。その爪が届く距離は、鼠の縄張りだ。
何れだけの人間が消えたのか、消してきたのか分からないが。
随分と静かになったものだ。
切れ切れになった夜の街の電飾と、木霊する亡者の呻き声。僅かに感じる人間の気配が動き出すから、僕らの戦いはまだ終わらない。
喜べ、友よ。
君の目を持つ人間が見付かった。
これで僕に、恩を感じてくれ。
そしてこれからも、僕の傀儡として働いてくれないか。
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