2/13
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
目を開ける。生きている。 ジャングルは夜の準備を始めていた。 汚れたボロボロの服と ズキズキと痛む身体を 崖の根元に擦り付けるように 腰をかけた。 上を見上げても見えるのは 木の太い枝と蔓の垂れの下で 僕を笑うように舌を出す黒黄色 の縞々模様のヘビだ。 これはまずい。 夜は野生の生き物にとって 安眠できるような環境ではない。 その自然の中の一員となった僕にとって、 このヘビでさえその気になれば その牙の注射器で僕を死に至らしめる ことも簡単なのだ。 大きな痛手を負った今。 開き直って、楽な近道としての選択肢も脳裏によぎるが、 せっかく儲けた命だ。 出来るだけ生きる方向。 生き残れるようにあがいてみることにしよう。 崖の根元に擦り付けたまま 体をよじりながら立つことを試みる。 ズリ。ズリ。ズリ。 「ふぅ。」 立てる。ひと息つく。 命も続く。 背中を支えてくれた無感情の崖が 優しく感じられた。 一歩目を踏み出したまま 僕はガサガサと草を抜き始めた。 それを一箇所に集め。 ある程度量が集まると、 崖に運ぶというのを繰り返した。 淡金の頃。 ちっぽけな家が完成した。 あとはここに身を潜めて 夜が明けるのを待つだけだ。 鈴虫の声があたりで喘ぐ 子守唄を枕に瞳を閉じた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!