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だが実際、誰かが辿り着いているならば、都市伝説の域を出る話が出回ってもおかしくはないだろう。誰もが探すその場所にいち早く辿り着いているならば、武勇伝にでもしている奴がいそうなものだ。
では何故、未だ噂の域を出ない話ばかりが出回っているのか。酒場で聞いた話も、ほとんどがそのようなもので、貴重だったといえば最後におばちゃんが教えてくれたとある条件くらいのものだった。
「でもさー、こんだけ色々噂があるのにさ、他に全然聞かないんだけど。幻想図書館にいる美少年の話」
口を尖らせながら不服そうに呟く。ベッドに腰掛けながら、足を組み、頬杖をつくと食べ終えたりんごの芯をゴミ箱に投げる。それは見事にホールインワンをした。
「「幻想図書館には水先案内人の美少年がいる」」
その風の噂を何処からか仕入れて来たオルメカは美男子愛好家としては会いに行かねばならないと、ソロモンを引き連れて旅に出てきたのだ。と、言っても、ソロモン自身、彼女の旅の道中で彼女に捕まり、旅は道連れと言わんばかりに同行することになってしまった哀れな男である。
風の噂を頼りに始まった珍道中の旅は、まだ始まったばかりだ。
☆
辺りはすっかりは暗くなり、夕飯も済ませ風呂にも入ってきたオルメカはベッドの上に寝転んでいた。
「あー久しぶりのふかふかベッドとお布団だー!」
気持ちよさそうにゴロゴロしている。
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