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都市伝説 幻想図書館①
「あんたたちはこれからどこ行くんだい?」
そう話しかけてきたのは酒場のおばちゃんだ。両手にお盆を乗せ、その上にはビールやらおつまみやら一品料理やらが乗っている。
頭にバンダナを巻き、腰にエプロン。腕まくりをしたふくよかな体型。…なんだかイメージ通りの世間話好きのおばちゃんだな、と少女は思った。
いかにも酒場、な木製のテーブルに木製の建物。そんな雰囲気の大衆酒場の3人掛けの木製の丸テーブルに少女と青年が2人で腰掛けている。
「あ、はいよ。ご注文の品の…フィッシュ・アンド・チップスと…」
酒場のおばちゃんは手際よく注文品を置いていく。
そうして注文分を置き終えると、話題は最初に戻る。
「それで?あんたたちはどこに行くんだい?旅行客…って訳じゃないんだろう?」
ちらりと少女の腰に掛けてあるブックボックスを見やる。
…さすがは大衆酒場のおばちゃんだ。よく目がいくものだ。少女は手をひらひらさせて答えた。
「ご名答。確かに私たちは旅行客じゃないよ」
隣で青年は炭酸の飲み物を無言で飲んでいる。
「やっぱりねぇ。あたしもここで働くのは長いからねぇ。見た目でわかっちまうんだよ」
わははとおばちゃんは笑う。
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