8月3週目

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「面白そう!」  清香が両手をあげた。 「もちろん、私の分もあるんでしょ?」 「たくさん買ってきちゃったもん」  悠希が笑って言った。いくつか、地面に置いて並べる。 「何種類か買ったの。好きなの選んで」 「ふうむ。どれがいいんだろ」 「性能としては、あまり変わんないと思うよ」 と環菜が言った。 「性能って、あのね」  璃子も言いながら、近寄ってくる。 「しかしまあ、こんなにたくさん買って。まさか、部費で買ってるんじゃないでしょうね」 「さすがに、自費よ」  環菜は笑って言った。 「いくら金あるって言ったって、こんなところで大人買いしなくても」 「?」 「?」  途端に、環菜と飯田が、璃子を見た。 「……何?」 「大人買いって言った」 と環菜が言った。 「あ……」  璃子は、さっと自分の口を手でおおった。 「遅い、遅い」 「大人って、何歳からだったか?」  2人がにやにやしている。 「うるさい!」  暑さも手伝って、頭に血の昇った璃子、手近にあった水鉄砲をひっつかんだ。 「そう言う自分はどうなの! いつも、レッドラインぎりぎりの言動ばかりして!」 「うおっ!」  環菜は飛び出してきた水を避けながら、声をあげた。 「飯田! 私の水鉄砲取って!」 「どこ?」 「後ろ!」  環菜は腕で顔をかばいながら、逃げ回る。 「これか!」 「そう!」 「――と見せかけての、裏切り」  環菜の前方と、後方、両方から水しぶきが飛んできた。 「うわあ! もう、うち来ても、絶対おつまみ作ってやんないから!」  環菜はわあわあ喚きながら、自分で水鉄砲を取りに行ったのだった……。 「もう、誰も信じられるもんか! 信ずるは己のみ!」  環菜は地面に落ちている水鉄砲を拾い上げて、振り向きざまに撃ち放った。 「うえっ」 「?」  飯田でも、璃子でもない声。 「清香!」  また、えらい人間に当たってしまった。
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