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・爆睡
テスト期間が明けた。
とはいえ、進学を希望する生徒は、受験勉強も進めて行かなければならない。
一方で、部活も再開され、いよいよ3年生は最後の活動に向けて、各々力を注ぐことになる。
「――あかり、」
環菜は自席の横を通ったあかりを呼び止めた。
「呼んだ?」
あかり、誰に呼ばれたのか一瞬わからなかったようで、きょろきょろあたりを見回した。
「私、私」
環菜は自分を指さした。
「ああ、環菜か。どうかした?」
「うん。私もどうかした、って言いたくて」
「へ?」
環菜はあかりの向こう側を指さした。あかりが振り向く先には――自席で突っ伏して爆睡している清香がいる。
「1時間目、ずっと寝てた」
と環菜は言った。「どうしたの、あれ」
「ああ……。何だか、昨日あんまり寝てないみたい」
「具合が悪いわけでは?」
「ない、と本人は言ってるけどね」
「まあ……体調が悪いわけじゃないんだったら、授業中寝てるくらい、いいけどさ」
「――いいわけないでしょ」
いつの間に、璃子もいる。
「さすがに起こさなきゃ」
環菜と璃子、あかりも連れ立って、清香のもとへ行った。
肩が小さく上下に動いている。なかなかテンポが早い。当たり前だが、やはり座って突っ伏した姿勢の睡眠なんて、体にいいものではないはずだ。
「――清香」
環菜が清香の背中をたたいた。
「そろそろ起きたらどうだい」
清香の体がもぞもぞ動いた。ゆっくりと頭を上げる。
「夏目さん、おはようございます」
と環菜は言った。
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