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「なんだか、お腹空いたね」
とあかりは言った。
「そうですね」
答えたのは、2年生の女子部員。「すみません、遅くまで私に付き合ってくださったせいで……」
「ああ、それはなし、なし」
あかりは笑って手を振った。
「ただ、まあ――コンビニは避けて通れない、かな?」
「うーん……ですね!」
後輩の元気な笑顔に、あかりは少し安心した。
2人は玄関につくとそこから別れて、あかりは3年生の下駄箱に、後輩は2年生の下駄箱に向かった。それぞれ、別のかたまりになっている。
「――ん?」
とあかりは言った。男バスの3年が何人か帰るところだった。
「あれ、増山」
1人が声をかけてきた。「今、帰るの?」
「うん。――そっちだって、今ごろ?」
「ちょっと休憩してた」
「何それ」
あかりは笑って言った。「だったら早く帰ればいいじゃん」
「それがなかなか難しい」
「お前がいつまでも床にへばりついて離れないから」
「何回もトイレ行ってたのはどこのどいつだよ」
すぐに、誰のせいだ何だと言い合いになる。
「――増山、」
と小崎が言った。
「……夏目は? 一緒じゃないの?」
「今日は私、2年と帰るんで」
とあかりは答えた。「それに……清香も、あとで1人で帰るって。そう言ったから」
「1人で……ね」
あかりはそっと小崎を見た。思案しているのが、表情でわかる。
「ねえ、小崎」
「何?」
「清香ってさ、何か悩んだりしてる時って、1人になりたがるよね」
小崎は瞬きをした。
「よく……知ってるな」
「そりゃ、あんたほどじゃないけど、私だって清香と結構な時間を一緒に過ごしてますからね」
とあかりは言ってやった。
「あいつ、何か悩んでるの?」
「それが……正直よくわかんなくて」
あかりは困った顔をした。
「2年の中でちょっとごたごたはあったんだけど、それはもう解決しそうだし。チームの状態も悪くないし、部活の雰囲気もいい感じにあがってきてる。清香が思い悩んだりするようなこと、ないと思うんだけどなあ」
あかりは小崎を見た。
「でもやっぱり、キャプテンにしかわからない悩みとか、あるのかな?」
「ううん……俺は夏目じゃないからな」
小崎はうなった。「俺とあいつは違うし、もちろん増山と夏目だって違うだろうし」
「それはわかるよ。わかるけど……」
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