7月2週目

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「先輩はこんなんじゃなかった」 「先輩って、前の部長の坂本先輩のこと?」  清香はうなずいた。 「すごくうまくて、かっこよくてきれいで、優しくて気も使えて。後輩全員、先輩のことが大好きだった」 「で、自分は先輩に到底及んでないって?」  清香がしかめっ面をした。――図星のようである。 「まあ確かに、優しくはないよな」  小崎はしみじみと言い、それから清香に蹴りを食らった……。 「私、先輩みたいに後輩の相談乗れないし、そういうのはあかりに任せっきりだし。細かい仕事も他のみんなにやってもらって、何なら2年生のほうがずっとしっかりしてるし」  確かに、それは間違ってはいないかも、と小崎は思った。 「私、先輩みたいに万能じゃないから、部長になった時、できることを頑張ろうって思った。他のことは、他の部員にも協力してもらおうって。適材適所というわけで」 「うん」 「でも……よく考えたら、それは甘えだったかもしれない」  清香の歩く速度が遅くなっていく。 「自分ができないこと人に押し付けただけ。やる努力も初めからしない。適材適所なんて言い訳で、自分の甘えを隠してただけ」  小崎も、足の動きを遅くした。――どうも、周りの評価と、本人の自己評価に差があるみたいだ。 「って考えだしたらもう、私とんでもなくひどい部長だったんじゃないかって。――先輩が卒業するとき、お願いねって、私に女バレをを託してくれたのに」 「……でも、部活はうまくいってるんだろ?」 「そう……思いたい」 「じゃあ、今から変える?」  小崎は清香を見た。 「全部、清香ががんばってやって、坂本先輩みたいなキャプテン目指す?」 「……」  清香の足が止まった。 「俺は、今のままがいいと思うけどね」  小崎も、足を止めて、清香の方を振り返った。 「それって、清香の個人的な願望じゃん。俺たちは部長だよ。最終的な目的は、部を強くしたり、楽しいものにすることでしょ? それができるんなら、別にキャプテンが万能である必要はないと思うけど」 「……うん」 「清香さ、何というか……憧れや理想が強すぎない?」 「ん?」  清香は首をひねった。
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