7月2週目

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「ある人に憧れたり、この人がいいって思ったら、意地でもその人みたいになろうとするところ」 「そうかな」  本人はあまり自覚していないようである。 「清香は、自分が思っているよりずっと、ずっと……」  小崎は清香の横に近寄った。  どの言葉を口にするべきか、ぐるぐると思い悩む。 「ずっと、周りのみんなは清香のこと、好きだと思うよ」 「そんなこと、」 「俺は増山からはっきりそう聞いた」 「でも、」 「考えてみなよ」  小崎は清香をさえぎって言った。 「本当に迷惑がられてるだけのキャプテンに、みんなついていくか? それで本当にいい部活になるのか?」 「……」 「清香だからみんなついてくるんだろ」 と小崎は言った。「清香だから細かい仕事も引き受けてくれるし、足りないところは補ってくれる。なのに、それを無視して自分1人で何とかするべきじゃないかなんて考えるのは、他のみんなに対して、失礼だと思う」  清香はうつむいた。――肩が震える。 「あ……でも、気持ちはわかるよ」  小崎は急いで言った。「その、やっぱり部長は……いろいろ考えちゃうよな」 「宏斗は……ちゃんとできてるじゃん」 「そう見える?」 「……見える」 「だったら、清香も周りからはちゃんとできてるように見えてるんじゃない?」  清香は目を伏せたままだ。 「だって、俺だって自分のこと嫌になったり、自信なくしたりすることあるんだ。悩みだってあるさ。でも、清香にはそうは見えてなかったってことだろ?」 「……」 ――今のは、ちょっと清香には響かなかったようだ。  小崎は短い髪をくるくるいじって、考えた。 「きっと、俺たちが先輩のこと見てたように、後輩たちも俺たちのことよく見てるよ。いいところも悪いところも。でも、それでも俺たちのこと先輩だって思ってくれてるんだよ。だから、うまくやれてるんだ」  清香が、小さくうなずくのがわかった。 「今のままでいいと思う。無理に変わる必要なんてないよ。清香は――清香のままでいてほしい。俺もそう思ってる」  清香から言葉は出てこない。視線は下を向いたままだ。――何となく、間が持たない気がした。  小崎の右腕が上がって、清香の頭の上に伸びた。
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