7月2週目

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「……」  しかし触れる直前、手は止まってしまった。指が中途半端に空を握る。そのまま降りて、今度は清香の肩のそばで止まる。 「……、」  これもだめだった。――まだ、できなかった。 「……清香、」  結局小崎の右手は、握手となって清香の前に差し出された。 「俺たち、頑張ろう」  清香が顔を上げた。 「大丈夫、俺も同じだ」 「宏斗、」  小崎がへへっと笑った。暗がりの笑顔は、何故だか心をなでるようにして、落ち着きを与えてくれた。 「……うん、頑張る」  清香はそう答えて、差し出された手を握った。――大きくて少し乾いた、男子の手だった。 「宏斗……ありがとう」 「いえいえ」  小崎も、手を握り返した。「やっぱり清香からお礼言われるの、変な感じ」 「どういう意味だ、それは」  清香は渾身の力を右手にこめた。 「痛い痛い、大事な手だぞ、おい……」  小崎は急いで手を振りほどこうとしたが、今度は清香がなかなか離してくれなくなってしまった……。 「――さて、少しはすっきりしたんなら帰ろうよ」  小崎は痛む右手をひらひら振りながら言った。 「うん、帰る」  清香は目をこすって言った。 「帰ったら冷やせよ。そろそろばれるぞ」 「ばれるって?」 「みんなに、清香が夜な夜な泣いて――」  次の瞬間、小崎の背中を激痛が走った。 「だからさ……体は大事にしようっての……」 「励ましてくれてんだか、バカにしてんのか、どっちなの」  清香はイライラして言った。 「心の底から励ましてんだよ、当たり前だろ?」 「どうだか」  清香は横目で小崎を見た。 「ほら、帰ろうよ」  2人は土手を歩き始めた。 「ねえ、」 と清香は言った。「宏斗の悩みって何なの?」
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