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ちょっとひと休み~登場人物紹介~
璃子は、3年4組の教室の戸を開けた。
そして、立ちすくんだ。
「――やあ、待ったよ」
親友、生島環菜が出迎えた。
清香と悠希もいる。
「ええと、これは何?」
璃子は、入り口の前で止まったまま、尋ねた。
3人は自分の席ではなく、最前列の机を4つくっつけて並べ、そこに着席していた。
「璃子、早く座ってよ」
環菜が、自分の隣の椅子を引き、パンパンたたいた。
「あ……うん」
とりあえず、言われるままに着席する。
「さて、これでそろった、と」
「ねえ、何するの?」
と悠希が尋ねた。
「悠希も知らないの?」
璃子は少し身を乗り出した。端と端では、相手が見えづらい。
「知らない」
「まだ、言ってないからね」
と環菜が言った。
「みんなそろってからじゃないと」
環菜は姿勢を正して、正面を見た。
「ええっと、次章から8月に入るわけですが」
「実際は5月、GW真っただ中だけどね」
隣で、清香が茶々を入れた。
「しかも、1年ずれちゃってるし」
「ん、まあ、それはまたちゃんと本編で……」
「これは、本編じゃないの?」
と悠希が言った。
「題を見れば、これが何かはもうわかるんだけどさ」
璃子が机に頬杖をつく。
「ちょっとちょっと、話が進まないから」
環菜は友人たちを抑えた。
「えふん、」
咳ばらいをする。
「で、ですね。学校は夏休みですが、みなさんに来ていただいたのは他でもない。物語として大事なものを、今ここで付け足そうと思いまして」
「ほう」
「つまり、登場人物紹介、あるいはメンバー紹介」
「このタイミングで?」
悠希が顔をしかめた。
「それじゃ、ライブだよ。――ここで、バンドのメンバーを紹介したいと思います、みたいな」
「まあ、そうね」
「何で春のときはやらなかったの」
「単純に、考えてなかった」
「何だ、そりゃ」
璃子があきれて言った。
「で、今やるの?」
「まあ、思いついたし、せっかくということで」
「適当だなあ、もう」
璃子は頭をかいた。
「ねえ、私たちが案内するこのくだりっているの?」
清香がのんびり言った。
「うーん、突然のメンバー紹介だから、何か挟んでおこうかと」
「何かって、何」
耐え切れずに、璃子が言う。
「確かに、物語の途中でいきなりこれが入ってきたら、わけわかんないかもね」
と悠希が言った。
「でしょ?」
「でも、題に書いてあるんだから、大丈夫な気もするけど」
と璃子が言う。
「だいだい、この物語がわけわかんないのは、今に始まったことじゃないし」
――璃子の言葉に、反論できた者は誰もいなかった……。
「なるほど、状況はわかった。何となくは」
清香がうん、とうなずいた。
「そうと決まったら、早く本題に移ろう。このぐだぐだで、すでに結構な尺使ってるから」
「尺って言うんじゃない」
環菜が清香をつつく。
「ただ、その前に、」
清香は、足元に置いておいた自分のかばんに、手をつっこんだ。
「――お菓子食べながら見よう」
ビニール袋から、チョコ菓子、スナック菓子、バランスよく登場してくる。
「お、いいね」
悠希が適当に袋を開けていく。
「もう、私は何も言わない」
璃子が1人で首を振っている。
「私は決めたんだ。いちいち拾ってたらきりがない」
「璃子のよくわからん決意はおいといて、」
環菜は再び正面に向き直った。
「えー、今回、主要登場人物に、簡単な質問をしました。それをまとめたもの――って、清香、食べる音がうるさい!」
「仕方ないじゃん、バリバリいうもんなんだから」
「口に入れる量が多すぎるんだよ」
環菜は鼻を軽くこすった。
「なんだか、ずいぶんと長く引っ張ってきてしまいましたが、はっきり言ってたいしたことありません。ちゃんとした説明じゃないです。何なら、メンバーのどうでもいい情報しか載ってないです。それでもいいという心の広い方は、どうぞ次ページをご覧ください」
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