話を巻き戻しその5 試験道中

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「蓮純さんは、こっちのソファーに座っていてください。椅子がよければ、この二つがあいているので好きな方にどうぞ。」 笑顔で言ってくれる四葉ちゃん。 「あっ、あっ、ありがとう……。」 こんな豪華な車に乗るのは初めて……っていうか、見たことすらないのでめちゃくちゃ緊張する。 ヤバい、舌を噛みそう。 「紅茶とケーキ、マカロン。トリュフチョコも、残ってたらちょうだい。」 信じられないことを言い出す四葉ちゃん。 「食事としては、サブジかダールね。」 さぶじ? だある? 聞いたことのない料理名だ。 「インドのカレーよ。インドってカレーの種類が多くて、使われてる材料がそのまま名前になってることが多いの。ちなみに、サブジは野菜でダールは豆。」 説明してくれる四葉ちゃん。 ……何で小学一年生がそんなこと知ってるの? 私は疑問をいだく。 「ナンやチャパティはご用意いたしますか?」 「ご飯でいいよ。」 「かしこまりました。」 私は、四葉ちゃんにささやく。 「ナンは分かるけど、ちゃぱてぃって何?」 「ナンと同じで、カレーと一緒に食べるパン。」 ……だから、何で小学一年生がそんなこと知ってるの? 「七面鳥の丸焼きは、どういたしましょう。」 車内に七面鳥の丸焼きなんかあるの!? 「いいよ、この間食べたから。先週の土曜も確か七面鳥だよね?もう飽きちゃった。」 七面鳥の丸焼きなどという超貴重な食べ物を「あきた」という事ができる四葉ちゃんがうらやましい。 「この間いただいたイギリスのトマトはお食べになりますか?」 イギリスのトマト! 本場じゃない! 「サラダにして出して。」 「かしこまりました。後、最近仕入れたマツタケが数十本残っておりますが……。」 マツタケ数十本! それって、ものすごーーーーーーーっく高いヤツ! 「いいよ、キノコはきらいだから。」 いいの!? 本当にそれでいいの!? 「かしこまりました。他には何かお食べになりたいものなどございますか?」 「うーん、特にないかな。蓮純さんは?」 私はブルブルと首を横に振る。 驚きと緊張で言葉が出ない。 「分かった、それじゃあ今のメニューでお願いね。」 「かしこまりました。」 そして私は、まだ出発すらしていないのに、世界には次元が違う大金持ちが存在することを知った。
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