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話を巻き戻しその6 試験会場
「……でか。」
それが、車を出た私の第一声だ。
でかい、大きい、巨大、広い、すごい、高い、堂々としている、今まで見たこともないくらい大きい!
試験会場と言うのは、公民館や体育館をそのまま巨大化させたような外見の建物だった。
が、違いはその大きさだ。
大きすぎる。
リムジンは駐車場に停めてあるのだが、この大きな建物の前の広い駐車場だと普通の車に見えてしまうから不思議だ。
いや、何も不思議ではないのかもしれない。
不思議に思うというより、驚きだった。
「あの、本当にここで試験をするの?」
「そうですよ?セキュリティも万全です。」
「ドア全開だし、警備員も一人もいないし、監視カメラすらないんだけど。」
「そうやって油断させておいて入ってきた犯罪者を取り押さえる役目も警察から引き受けているんですよね、ここは。ドアにはインターフォン代わりにベルがあるでしょう?あれは実はベルに見せかけた顔認証システムで、ドアを通る人の顔をスキャンするんです。登録していない人が入ったら、即座に罠が発動します。まあ、落とし穴とか矢が飛んでくるとかいった物騒なものはないですから安心してください。蓮純さんは登録されていませんが、登録してある私が一緒なので大丈夫ですよ。」
……甘く見てごめんなさい。
「ちなみに物騒じゃない罠って?シンプルな罠だと犯罪者を捕まえられそうにない気がするんだけど。」
「これが面白いほど捕まるんですよ。目に向かって飛んでくるシャンプーや鼻に向かって飛んでくるわさび、頭をめがけてとんでくる積み木、床に突然現れるビー玉の何が怖いんでしょうね。後はからしパウダー入りヨーヨーがところせましと投げつけられたり、出没するのを捕獲しておいたネズミやゴキブリが天井から落ちてきたり、ズラのおじさんに扮した人が酒を勧めたりするくらいなんですが。私も全部の罠は知りませんけどね。」
私は、今までここに侵入した犯罪者の数々に心の中で手を合わせて合掌する。
物騒じゃない罠どころか、普通のトラップよりよっぽど強力じゃない!
今後なるべくこの建物には入らないようにしようと、私は心に決める。
「さあ、では入りましょう。」
あっさりとドアの中に入る四葉ちゃん。
私も後からついていったけれど、登録してあるという四葉ちゃんが一緒だからか、罠は発動しなかった。
ホッと一息だ。
心臓に悪い……。
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