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「あ、蓮純さん、ここが試験会場になります。」
「うん、わかった。」
四葉ちゃんに案内され、私はがっしりしたドアの前に立つ。
と、
「失礼ですが身分確認をお願い致します。」
傍に立っていた女性が丁寧に頭を下げてきた。
「あっ、すみません!こちらが悪夢退治業界の名刺、こちらは証明書、こちらがプロライセンスと認定証になります。」
やたらと紙や書類、カードを出してくる四葉ちゃん。
悪夢退治の世界って、そんなに細かいのだろうか。
四葉ちゃんが差し出した書類を全て確認すると、女性は頷いて一礼した。
「広法田(こうほうでん)四葉様ですね。悪夢退治界に降臨した天才児四葉様といえば、お名前はお伺いしております。お会いできて光栄でございますわ。失礼ですが私は警備をやっている修ヶ浜(しゅうがはま)と申します。この度はよろしくお願い致します。」
こうほうでん?
一瞬、頭の中が真っ白になった。
こうほうでんって、あの広法田!?
超有名で「何から何まで提供する何でも屋」な幅広い商売が売りの広法田!?
テレビをつけたとき広法田社のCMが流れている確率は六十パーセントを上回るっていう、あの広法田社の!?
それで四葉ちゃんはこんなにお金持ちだったわけ!?
「うん、よろしくね!こっちは新人志望の蓮純さんだよ。ほらっ、蓮純さん挨拶して!」
「あの、初めまして。蓮純と言います。宜しくお願いします。」
……つっかかりはしなかったけど、声がめちゃくちゃ裏返った。
でも修ヶ浜さんは笑わない。
この人プロだ!
「蓮純様ですね。かしこまりました。四葉様の同伴であることですし、素晴らしい結果を期待しております。頑張ってくださいね。」
期待までされてしまった。
どうしよう、これで落ちたりしたら……。
「蓮純さん何ボケッとしてるんですか。ほら、会場に入りますよ。」
「あっ、うん!」
四葉ちゃんのほうがしっかりしてるよぉ……。
半べそ状態でドアを開けてもらうと、さらにもう一つさっきよりがっしりしたドアが。
二重ドアと来たか!
流石の厳重さ。
「四葉でーす。戸田さん、今年もドアの警備係?大変だね。」
顔見知りなのか、ドアの近くに控える女性に四葉ちゃんが挨拶する。
「まあ、専属の警備会社に勤めてますし、運命と思ってあきらめてます。侵入者なんてトラップとか他の警備員が全員捕まえちゃって、仕事ないんですけどねー。一応証明書見せてもらえます?」
「うん、これかな?」
「ありがとうございまーす。どうぞ通ってください。試験を受けるのはそこの可愛い女の人?モデルさんかな?にしてはあんまり見たことないなあ……。」「いえ!私はちょっとした会社に勤めてて、モデルやアイドルでは……えっと、私が試験を受ける方なのは、そうです。」
って何言ってるの私!
戸田さんはくすくす笑いながら言った。
「四葉ちゃんの知り合いでしょう?頑張ってくださいねー。というか、精神が疲れないうちに試験場につくといいですね。」
え?
精神が疲れる?
きょとんとしているうちにドアが開かれ、さらに頑丈な新しいドアが……。
何てこったい!
その後六重ドア、九重ドアと続いていき、十五重ドアくらいになったところでようやく警備員の人に
「よく頑張りましたね、これが最後のドアですよ。」
と言われた。
苦笑しているのがなんか悔しい!
そして、ドアが開くと……。
「うわあああー……。」
感嘆の声しか出なかった。
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