話を巻き戻しその6 試験会場

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何と言っても広い! でかい! 大きい! 巨大! 天井高い! 全部同じ意味かな? だって、本当にそれぐらい大きいんだもん。 新入りらしい人がずらずら並んでいる。 これ以上ないくらいふかふかのクッションで埋まった椅子がたくさん並び、老若男女その場にいる人は様々だ。 正面にはプールくらいの広さのステージがデン!と構えている。 うーん、迫力。 「あっ、蓮純さん!如月さんいましたよ!」 「え、どこに!?」 キョロキョロ辺りを見回すと、穏やかな微笑みを浮かべている如月さん。 胸からは<特別審査員 如月>の名札をかけていて、目の前のテーブルには『GUEST』とマジックで書かれた札が立てかけてある。 すごい偉い立場みたいになってるけど、それでも知り合いを見るとホッとする。 「じゃあ、私は見つかると偉い人やファンに囲まれちゃうので、ちょっと姿をくらましてきますね!大丈夫、影から見てますから安心してください。」 「え、ちょっと、姿をくらますって……。」 四葉ちゃんの発言に驚いて振り向くと、もうそこには四葉ちゃんの姿はなかった。 ちょっと……。 四葉ちゃんがいなかったら私、どうすればいいのぉ……。 「試験を受ける方かしら?」 ふいに声がかかった。 「椅子に座って開始を待っていてください。もうすぐ始まりますので。」 焦げ茶色のボブカットをした可愛い顔立ちの女性が人懐っこい笑顔を浮かべている。 少なくとも、愛想笑いって感じはしない。 「ありがとうございます。」 とりあえずお礼を言って椅子に座る。 緊張……。 すると突然ブーッとブザーが鳴り、心臓が止まりそうになった。 開始? 予想通り会場の電気が落とされ、安物っぽいけどすごく柔らかそうなソファーにスポットライトがあたった。 座っていた女性がマイク片手に立ち上がる。 さっき私に椅子に座るよう指示してくれた、ボブカットの小柄な女性だ。 「皆様!長らくお待たせいたしましたが、これより悪夢退治を生業とするナイトメアハンターを目指す方々のための、悪夢退治業界トップによる試験を開始いたします!私は本日進行役を務めさせて頂く硲(はざま)と申します。どうぞよろしくお願いします!」 ワッと拍手が沸き起こる。 「では初めに本試験の開催者代理兼責任者、丹(あかし)より開会のご挨拶をいただきたいと思います。丹さーん!」 ヒーローショーでヒーローを呼ぶお姉さんみたいなノリで、硲さんが声を出す。 わあ、この人好きっ! ノリとか雰囲気とか、すごく好き! 「はーい!」 返事をする丹さんも、同じノリだ。 「えー、アーアー、マイクテスト、マイクテスト、本日は晴天なり本日は晴天……あれ?今日って雨でしたっけ硲さん?」 「知りませーん!」 ドッと笑いが起こった。 「どうせマイクテスト何ですから好きなようにやってください!」 「はーい!えっとじゃあ適当に。本日は晴天なり、晴れのちSunny時々竜巻と地震_____。」 「ちょっと丹さん、晴れとサニーは意味一緒なんですけど!」 「サニーではないSunnyだ!いいじゃないか、マイクテスト何だから好きなように言うよ。えー、地震のち歯医者、時々雲から降る水……。」 「雨なら雨って言ってくださーい!」 すでに会場の雰囲気はすっかり和んでいる。 「歯医者って何だー!?」 「天気予報で地震は予報しないぞー!」 そんなヤジも飛び始めている。 「あー、マイクテスト終わり。失礼、只今ご紹介にあずかりました責任者の丹です。今日この試験から輝かしい新人が誕生することを祈って!」 そこまで言って勢いよくマイクを突き上げる。 何だ?と思ったらゲストの人や審査員も片手をあげる。 「かんぱーい!」 声をそろえる全員。 乾杯ですか! で、丹さんは戻って行ってしまう。 終わりですか! 「というわけで試験を開始します。ゲストの席に座っていらっしゃるのは最近期待の若手新人___。」 早速硲さんが始めたのは、入学式や卒業式でいう来賓紹介だろう。 「そして最後に、特別審査員如月さんです!」 ワーッと拍手する硲さん。 みんなつられて拍手。 「如月さんは小学生からナイトメアハンターとして第一線で活躍し、現役引退後の今でも今回のようなゲスト審査員や大会の責任者として名前を轟かせ、かつてはナイトメアハンターのためのコンテストで何度も優勝を飾った悪夢退治業界の第一人者でいらっしゃいます!皆さん、改めて大きな拍手を!」 如月さん、そんなに凄い人だったの!? 私も驚きながら盛大に拍手をした。 「では、試験を開始します!まずはこの場で一人ずつ面接を行います。」 会場がどよめく。 私も硬直する。 この場で面接!? 「面接官十人がそれぞれ順番に面接をしていきます。こちらの面接官は後ろの列、こちらは一番前の列、こちらの二人は真ん中の列、という風に分かれて面接をするので、安心してください。それでは、面接官の方は移動してくださーい!」 ずらずらと面接官のネームプレートをつけた人たちが移動してきた。 私はよりによって一番端に座っていたため、すぐ隣に面接官の人がくる。 トップバッターなんて最悪……。 「それでは、面接開始!」 合図とともに、それぞれ面接が開始された。
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