パンドラの箱に最後に残るのは希望か、それとも……

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「お帰り・・・・・あれ、もしかして、一太寝ちゃった?」 「地竜(ディノン)の面見るなり良かった、生きててって急に泣き出したんだ。心配してたんだよ。入学式に来てくれるって指切りげんまんしたのに来てくれなかったら、何かあったんじゃないかって心配で寝れなかったって。そんなことを話しをしていた。いままで一度も約束を破ったことがないから尚更心配だったんだろうよ」 彼の背中におんぶされ、鼻をずずっと啜りながら一太は寝ていた。 地竜さんの元気そうな姿を見て安心したのか、その寝顔はとても穏やかだった。 「卯月、ランドセルはどこに置く?」 「お、ありがとうな」 手に黄色い帽子を持ち、肩にランドセルを背負い地竜さんも一緒に帰ってきた。 「おじちゃん‼」 地竜さんが帰ってきたよ。と紗智さんと那和さんに教えてもらった遥香。 玄関にちょこんと座りずっと帰りを待ち続けていた。 「パパ、おじちゃん、おかえり」 地竜さんの顔を見るなり、にこにこと満面の笑みを浮かべ、手をぶんぶんと振った。 「一太やハルちゃんに熱烈に歓迎されて、おじちゃんちょっと恥ずかしいな。でも嬉しい。ありがとう」 照れながらも遥香の頭を撫でてくれた。 「あのね、おじちゃん。あしたから、ハルちゃん、ようちえんいくんだよ」 「そうか。確か、入園式だったな」 「うん‼ねぇ、おじちゃん」 「ん?」 「ハルちゃんのおねがいきいてくれる?」 「おぅ、なんだ?」 「あした、いっしょにようちえんいこう。ハルちゃんね、パパとママと、ままたんとぱぱたんと、それからおじちゃんいっしょがいい」 「ハルちゃん・・・・」 予想もしていなかった遥香のお願いに、地竜さんは一瞬驚いたように目を見開き、それから顔を手で覆った。 「ごめん、ハルちゃん。おじちゃん、嬉しくて涙が止まらなくなった」
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