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パンドラの箱に最後に残るのは希望か、それとも……
「なぁ、播本、卯月、蜂谷やけに静かだと思わねぇか?」
「言われてみればそうだな」
「さっきまで強い風が吹いていたのに音一つしない」
「嫌な予感がする」
激動の昭和・平成をヤクザ一筋で生き抜いてきたお祖父ちゃんたちの顔色が一斉に険しくなった。
定年まで40年近く警察官を勤め上げた総一郎さんの目付きもがらりと変わった。
「会長、カシラ‼」
根岸さんが伊澤さんと若い衆を伴いドタバタと入ってきた。
「安井カオルに張り付いていた三浦からさっき連絡が入った。カオルが集中治療室から忽然と消えた」
「古狸やダオレンの目撃情報はないのか?」
「今確認中だ。三浦が言うには、妹を名乗る若い女がカオルがいなくなる1時間前に面会したいと集中治療室を訪ねてきた。応対した看護師が面会謝絶だからと断ると、何も言わず立ち去った」
「そうか」
度会さんが前で腕を組みしばらくの間何やら考え込んでいた。
「蜂谷、倅に至急電話をしてくれ。カレンの命が危ないってな」
「度会どういうことだ?」
お祖父ちゃんたちが一様に瞠若した。
「決して開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった。カオルもカレンも、そしておそらく彩も………」
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