パンドラの箱に最後に残るのは希望か、それとも……

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「遥琉さん……地竜さん……」 足音を忍ばせ、そぉーと子どもたちが寝ている座敷を覗き込んだ。 一太も遥香も地竜さんにぴたりと張り付き片時も離れようとはしなくて。 普段は滅多に駄々を捏ねることがない一太と遥香が、寝るのいやだ‼と駄々を捏ね、なかなか寝てくれなかった。 ほとほと困り果てていたら、彼と地竜さんが代わりに寝かし付けを引き受けてくれた。 「二人ともようやく寝てくれた」 添い寝していた彼と地竜さんが二人を起こさないように静かに体を起こした。 指をしゃぶりながら、もう片方の手で服をぎゅっと握り締めてなかなか離そうとしない遥香を、地竜さんは目を細め愛おしそうに見詰めた。 「なぁ地竜、さっきさぁ、俺の入り込む余地なんてこれっぽっちもなかった。だから、声すら掛けることが出来なかったって言っただろう?一太と遥香はお前が帰ってくるのをずっと首を長くして待っていたんだ。地竜、お前の帰る場所は未知や子どもたちのところだ。頼むからもう二度と一太や遥香を悲しませないでくれ」 「明日、入園式が終わったら帰るって言ったら一太やハルちゃんにまた泣かれてしまった。俺だってずっと二人の側にいたい。でも、ダオレンは例え相手が妊婦や子どもでも決して容赦しない血も涙もない冷徹な男だ。俺が側にいたのでは確実に命を狙われる」 猫っ毛の柔らかい髪をそっと撫でてくれた。 「あの……遥琉さん、地竜さん。渡会さんが言っていたパンドラの箱って………」 二人の表情が一瞬だけ強張ったのが分かった。 「やっぱりいい。ごめんなさい、変なことを聞いて」 やっぱり聞いちゃいけないことだったのかも知れない。
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