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ーーママ・・・ママ・・・
誰かが呼んでる。
一太の声じゃない。誰だろう?
恐る恐る、ゆっくりと目を開けると、小さな男の子がニコニコと人なつっこい笑顔を浮かべて目の前に立っていた。
小さな手がそっとお腹を撫でてくれた。
かみさまがね、あたらしいママの子として、いきなさいって。
ぼくね、パパとママにうざい、いらないっていわれて、いっぱいたたかれたの。あたまからねちがいっぱいでてね。
きがついたらここにいたの。
かみさまがね、あたらしいママとパパはすごくやさしいって。
おにいちゃんもいるって。ずっとひとりぼっちだったからすっごくうれしくて。
実の親から虐待をされて亡くなる痛ましい事件があとをたたない。
負の連鎖を止めるには、茨木さんの言うように、もう2度と繰り返さないように、同じ過ちを繰り返さないようにしないとならない。
この子のどこか悲しげな眼差しは、それを訴え掛けているのかもしれない。
僕に出来ることは一つだけ。彼と共に一太を守ること。たくさんの愛情を注ぎ、慈しみ、育てること。
一人きりだったら絶対無理。でも、彼となら出来るかも知れないもの。
ねぇ、名前は?
はるとだよ。
ママのことみんなまってるよ。
もうすこししたらあいにいくね。
ニッコリと笑うとその男の子は、すっと消えてしまった。
お腹に何気に手を置くと、その子の手の感触がまだ残っていて。
なんだろう、温かくて、優しくて。
触れているだけで、不思議と幸せに満ち溢れてくる。
彼の声が聞こえてきて、ママって呼ぶ一太の声も聞こえてきて。
戻らなきゃ、そう思ったら意識が、光輝く青い空に向かって浮上していった。
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