彼のお父さん

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【・・・中澤・・・さん・・・】 二度も三度も思わず顔を見てしまった。 「びっくりするわな、普通。今まで素性を隠していたことまずは謝る。決して悪気があった訳じゃないんだ。それだけは信じて欲しい」 中澤さんが歩み寄ってくれて。 「この体勢は辛いだろ。体が冷えるとお腹の子にさわるから、こっちへ」 肩を支えてもらい、畳の上から座布団の上に移動した。 「じゃあ、改めて」 中澤さんが背筋をピンと伸ばし、ゴホンと一つ咳払いした。緊張しているのか、額の汗を何度もハンカチで拭いていた。 「初めまして、じゃないね。ごめん、未知ちゃんを目の前にするとどういうわけか上がっちゃうんだよね。だから、あまり見詰めないで欲しいな。旦那さんに焼きもち妬かれても困るからさ」 中澤さんってほんと面白い。思わず吹き出してしまった。 「秦尚道だ。未知ちゃんにとっては叔父にあたる。三年前、父とね、いっぱい考えたんだ。どうしたら未知ちゃんと一太を守れるかって。本当はすぐにでも名乗り出たかった。でも、弱音を吐かず笑顔で頑張ってママしている姿を見てね、素性を隠し影ながら見守ることに決めたんだ。もし、未知ちゃんに万が一何かあったら、いつでも駆け付けられるように、口の固い信用出来る部下を張り付けて置いたんだ。だから、未知ちゃんが連れ去られたときも、迅速に対処することが出来たんだよ。本当は、父に代わり未知ちゃんを助けに行くつもりだったんだ。でも、二人と刺し違える覚悟を決めた父にはどうにも敵わなくてね。孫のことになると父は人が変わるから」 本当困った人だよね、苦笑いを浮かべる中澤さん。 「ちょっと話しが見えないんですけど」 困惑しながら心さんが、間に割り込んできた。
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